
エロフ=ファンタジー系RPGゲームでは欠かせないエルフの突然変異種。常に高濃度のフェロモンを放出しているため、その全身から漏れ出る色香で冒険者を戦闘不能にしてしまう厄介な性質を持つ。(現在確認されている個体数は若干1名)
近年、サーバー負荷によるバグで時折発生する発情期モードにおいては、エロフの半径100メートルの範囲がショッキングピンクの霧におおわれるという現象が報告されており、運悪く(良く?)その間合いに足を踏み入れてしまった冒険者は、以後72時間の間、前屈みの体勢での移動を余儀なくされるという事象が一部のユーザー間で都市伝説と化している。
アスモデウス:「はぁ~。退屈ねぇ……。何か下半身にクルような……面白いことないかしらぁ?」
マモン:「わたくしも、そろそろ戻らないと子どもたちが心配だわ……」
ベルフェゴール:「え~。ゲームは、クリアするまでがお仕事だよぉ~」
どのくらい前か忘れたが多分数回前……。大魔王・ルシファー様の適当な思いつきにより、半ば強制的に『魔王物語』へと参戦させられることとなった魔王様方。
久方ぶりの全員参加イベントにご機嫌だった大魔王ルシファー様が、とっくに飽きていつの間にやらお一人でサクッと現実世界にお戻りになってから……それから数日後のこと……。
事情を知らない魔王様方は、とある街のとある酒場にて、バッタリ再会を果たされておりました。
来る日も来る日も、雑魚との戦闘の毎日。現実世界とはあべこべに、ベルフェゴール様以外のお二方の方が少々お疲れのご様子。
と、そこへ……。風にのって飛ばされてきた真新しい手配書が一枚、マモン様の足元へヒラリ。
マモン:「あら……? ねぇ、これってあなたのことなんじゃない?」
アスモデウス「え……?」
『妖艶すぎるエロフ出没! 夜間や朝方など、霧の濃い時間帯に注意!』
その日、全国の酒場という酒場に貼り出されたのは、超危険人物の手配写真。
今、巷を賑わせている謎の怪奇現象『ショッキングピンクタイム』の元凶と言われるエロフへの注意を促すものであった。
『あなたのハートをキャッチ&リリース。わたしの色香にご注意エロフ(はぁと)』
どこのどいつが考えたのか、そのセンスを疑わずにはいられないキラキラ文字のキャッチフレーズの下には、ショッキングピンクの霧の中、アーチェリー片手にグラマラスな肢体をひねらせ、今にも矢を放とうとしているいやらしすぎるエルフもどきがパシャリ。隠す気があるんだかないんだが、お胸のポッチをハートマークに忍ばせて、たわわな果実がぷるるんトゥルン。大胆不敵にとぅるるんプルン。
けしからん!! ああ、実にけしからん!!
確かにこの手配写真、妖艶すぎる色欲の魔王様・アスモデウス様ご本人に間違いないようである。
アスモデウス:「う~ん、確かに私っぽいけどぉ~。でも私、エロフじゃなくてエルフなんだけどなぁ?」
ベルフェゴール:「そうだよ~。アスモちんは、超~エロ~いエルフだよ~」
マモン:「あ、なるほど!」
アスモデウス:「そういう意味ね……んふふふふ」
くだらないダジャレに気づいた大魔王お三方の笑い声が、店内にこだまする。
……と、実はこの店内、かつてないほどの熱気に包まれていた。美しすぎるお三方を一目見ようと、いつの間にやら黒山の人だかりとなっていたのである。
それもそのはず、いつの間に書き込まれたのか、居合わせた客や店主によって、勇者専用掲示板には『テラ女神降臨!』『美しすぎてタヒりそう』『目が目が~~!!』等の投稿が踊っていた。
書き込みに煽られて集まった勇者たちは、総勢……あ、数えきれない。大胆過ぎるお衣装と刺激的すぎる美しさに、店主もお客も視線は釘付け。店内、ボルテージは最高潮!
アスモデウス:「ふ~ん……。なんだかよくわからないけど、でも隠し撮りは嫌いじゃないわ。ドキドキしちゃうもの。んふ」
デカデカと記されたWANTEDの警告と100万ジェニー(魔王物語内での通貨)もの高額な懸賞金。ご機嫌ななめだったアスモデウス様も、少しは気をよくされたご様子で、いつもより濃いめのドライマティーニをご注文。
グビッと一気に飲み干され、体内を駆け巡るアルコール。
その瞬間、白く美しい頬と胸元にほんのりと赤みが差し始め、憂いに満ちていた瞳にも、妖しげな光が宿った。
―――ビー! ビー! ビー!
突然鳴り響きだしたのは、サーバー負荷を知らせる警戒警報。つまり例の『ショッキングピンクタイム』突入合図。
ベルフェゴール:「あっ、アスモちん。なんか出てるよ~」
と、思わずベルフェゴール様がそう叫んだ瞬間……辺り一面半径100メートル四方は、アスモデウス様より漏れだした超フェロモンによって、一瞬にして完全なるショッキングピンクの世界へと変貌した。
アスモデウス:「ねぇ、コレ、シャワー浴びるとたまに出るんだけどぉ、なんなのかなぁ? いつも前が見えなくて……。って……え……? キャー! ナニコレナニコレ!」
普段はやる気なく放置していた目の前の霧を払ったアスモデウス様の視界に飛び込んできたものは、下半身を抑え前屈みにモジモジしながら、バツが悪そうにハニカム大量の勇者であった。
アスモデウス:「ナニコレ! 面白い! 最高! 素敵! やだぁ~もっともっと~!」
アスモデウス様のテンションが上がれば上がるほど、男たちの前屈み率は増していった。
アスモデウス:「ベルフェゴール! 私、もうちょっとここで遊んでイクゥ!」
思いもよらぬサーバー負荷により、アスモデウス様がやる気を取り戻されたその日、同じくやる気を取り戻された方がもう一人……。
マモン:「瞬時に前屈みを治すお薬、今だけ特別に200万です。いかがですか? んふふ」
