
職業=魔王の中の魔王にして元大天使。
言わずと知れたそのお方の名は、ご存知、大魔王・ルシファー様。
今日も優雅に高級ワインなど楽しみながら、退屈な昼下がりをお過ごしのご様子。
そこへいらっしゃったのは、めったに自部屋からお出にならないはずの怠惰の魔王・ベルフェゴール様。
何やら今流行のオンラインゲームに、他の魔王様方をお誘いにいらしたようで・・・・・・。
ベルフェゴール:「ギルメンが足りないんだよ~。だから~、ちょっと手伝ってほしいの~。るしー、ひまだよね~」
ルシファー:「悪いけど、あたしオペラは演るより観る方が好きなの・・・・・・」
誰よりも傲慢で誇り高き偉大なる存在である。無論、何人たりとも、その尊厳を侵してはならない。
例え、そのあまりの世間知らずっぷりに思わずクスリと笑いたくなってしまったとしても・・・・・・。
例え、「これは完全に計算してやってるだろ」としか思えないような大ボケをかまされて、ツッコミを入れたくなってしまったとしても……。
決して尊大なるルシファー様にご意見など申し上げてはならない。
なぜなら、ルシファー様は上から目線に立たれることが、何よりもお嫌いなのだから・・・・・・。
ベルフェゴール:「カルメンじゃなくて、ギルメンだよ~。るしーってば、知らないの~? おくれてる~」
とはいえ、あえて地雷をズカズカとお踏みになるのが、ベルフェゴール様だったりするわけで・・・・・・。
ルシファー:「(ピキピキ)いやね、ベルフェ。あたしが知らないものなんて、この世の中にあるわけないじゃない。ギルメンくらいいつでも支配できてよ」
そう返答しつつも、踏まれた地雷はきっちり処理するのがルシファー様のポリシーなわけでして・・・・・・。
ベルフェゴール:「じゃあ、一緒にやろ~よ~。勇者物語~」
ルシファー:「勇者物語? ふーん……。まぁ、なんでもいいわ。たまにはベルフェとも遊んであげないとね。あたしが最後まで責任持って、やってあげる。お前たち、せっかくだから全魔王に招集命令をかけなさい」
こうなるともう、なんだかとっても素敵なことになり過ぎる予感しかしないわけなんですけどね・・・・・・。
ルシファー:「さぁ、ゲームを始めるわよ!」
キャスター:「続いてのニュースです。本日日中から夕方にかけて、大人気オンラインゲーム『勇者物語』のプログラムにおいて突如深刻なバグが発生し、ゲーム内容が大幅に改変されてしまったもようです。新たなゲームタイトルは『魔王物語』と改名されており、運営元ではハッキングの可能性も視野に入れ、現在もこの現象についての対応に追われています」
ゲーム開始から数時間。
勇者とその仲間たちが目指すのは、世界征服を企む凶悪な魔王……といったお約束なRPGストーリーは、すっかりとなりをひそめ……。
漆黒の闇と神聖なる光が混在する混沌とした世界。
かつて勇者と呼ばれた人々は、美しき7人の魔王へと挑み、そして破れた。やがて彼らは、その姿を凶悪な魔物へと変貌させ、最強のモンスター軍団へと生まれ変わる。
すべては大魔王様のため・・・…全ての勇者を倒し、理想の暗黒世界を目指すため……。
世界は今、暗黒の支配する新たな時代へと幕を開けようとしていた。
―――ピコン!「勇者に遭遇!」 → たたかう? にげる? どうぐ? まほう?
ルシファー:「そうね~。せっかくだから、全部選んでみようかしら・・・・・・? 軽く戦って、怯えて逃げたところを道具で捕まえて、最後に魔法でモンスター化! いいんじゃない??」
もはや選択肢の意味が無い攻撃チョイス!
そもそもアバターの姿形が気に入らないってワガママで、自らゲームの中に飛び込まれたルシファー様。
ボンキュッボンなナマの肢体にゲーム世界のキワドイ衣装と・・・・・・。
そんな美しすぎる魔王様方がボスキャラとなれば、そりゃあゲーム内容がどれだけ改変されようが、プレイヤー人数はうなぎのぼりに増えるのは当たり前なわけでして……。
その柔らかさとは裏腹にハリのある美しすぎる胸元と、布面積の少なすぎる動揺MAX効果の最高級ショーツ。防具らしい防具といえば、肩当てと盾のみというなんとも心もとない装備が、むしろその確固たる自信にも受け取れる。
美しさと最強を纏ったわがままフェイス&バディ!! これこそ本物の魔王様だからこその究極装備と言えよう。
もちろん他の皆様も半ば強制的に転送され、それぞれルシファー様チョイスの素敵装備を身につけていらっしゃるわけでございまして……。
レヴィアタン:「さすが、お姉さま! その衣装も素敵!」
サタン:「待て! こんな衣装で戦えるか!?」
ベルフェゴール:「自分で動くのめんどくさ~い」
マモン:「ここで稼いだお金、持って帰れるかしら?」
ベルゼバブ:「アレ、食べていい……?」
アスモデウス:「可愛いペットがほしいな~。ゾクゾクしちゃいそうなやつ……」
ルシファー:「さてと、準備はいいわね? 一人残らずモンスターにしちゃうわよ!」
