
夏祭りを100倍楽しむための3大要素と言えば、夜店に花火、美人の浴衣!
ルシファー:「ベル。今夜はお祭りだそうよ。行きたい?」
どこからお聞きになったのか、今夜近所で開催されるというその小さなお祭りに、ペットであるベルゼバブ様を参加させるべく、大魔王ルシファー様が口を開いた。
ベルゼバブ:「……いかない。にく……もっと」
もちろん飼い主のルシファー様としては、日がな一日篭りきり、暴飲暴食を繰り返しては、全く運動なさる様子もない暴食の魔王ベルゼバブ様の健康状態を危惧なさっての提案なわけで、お祭り衣装であるハッピから足袋まですでに全てを手配済み。
つまりそれは決定事項?
ルシファー「あら、お祭りは何かとオイシイわよ?」
ベルゼバブ:「おいしい……いく。おいしい……もっと」
大好きな単語を聞くなり、お祭りの仕組みもルシファー様の仕込みも邪推することなく、二つ返事でお散歩を快諾されたベルゼバブ様。
―――どんだけ食い意地がはってるんですか……?
ルシファー:「じゃあ、とびっきりエロ可愛く、おめかししてあげるわね」
―――なんですと!? え、エロ可愛く……!? てことは、乞うご期待しちゃうじゃないですか!?
そんなこんなで、ルシファー様の思いつきにより急遽決定した『ベルの一人でお祭りイケるもん!』
果たして、結末はいかに?
数時間後。
幼き姿に鉄の胃袋、ベルゼバブ様の姿がそこにあった。
大勢の人でごった返す夜店の立ち並ぶ中通りで、一際目立つその甘美な立ち姿。周りの人々も、あまりの衝撃に二度見しては立ち止まり、三度見しては引き返す。
愛くるしい瞳にマシュマロのような頬、思わず抱きしめたくなる華奢な肢体と作為的なほどマニアのツボを心得たダークツインテール。
小さな唇でハフハフしながらアツアツのたこ焼きを夢中で貪るその無邪気なお姿は、まさに地上に舞い降りた堕天使そのもの。
さらに、おろしたてのハッピから覗く……否、完全に丸出し……、失礼、惜しげも無くさらけ出した……そのツゥルツゥルでプリンプリンな桃尻、桃尻、ビューティフォー!!
―――どうなんですか!? このファッションは! グッジョブ過ぎます! 大魔王様! あの食い込みがサイコーです!
ベルゼバブ:「これ……もっと……」
そんな周りの興奮などお構いなしに、ベルゼバブ様はいつもの様におかわりをご所望中。とはいえ、地上ではもちろん先立つものが必要になるわけでして……。
たこ焼き、イカ焼き、焼き鳥、綿菓子、氷に串焼き、リンゴ飴……。
ルシファー様の持たせてくれたお小遣いは5万円。夜店で5万円分も食事するともなれば、相当な量を食べられそうなものですが、到着後10分もたたぬ間に、案の定というかお約束というか、首に下げたがま口の中身は、当たり前だがスッカラカンとなりました。
店主:「気に入ってくれて嬉しいが、おかわりしたけりゃ代金を持ってきな」
ベルゼバブ:「これくれ……もっと」
店主:「だからね、嬢ちゃん……。夜店でツケはきかないんだって……」
ベルゼバブ:「はやく……もっと」
そんな押し問答を繰り返すのを見かねてか、はたまたそのお食事っぷりに魅せられたのか、それとも単にピーチでハッピーなヒップにしてやられたのか……? 誰彼ともなく財布を取り出し、連なる夜店の食べ物類ばかりを大量購入しては、ベルゼバブ様へ進呈し始める。
ベルゼバブ:「んくんく……もっと」
健康維持のためのお散歩どころか、いつも以上の暴飲暴食。 打ち上げ花火には目もくれず、なんとかして自らの手から魔王様に食していただこうと、群がる人、人、大歓声。完全に大餌付け大会の様相をていしてきた始末で、ここまで来たら夜店連合が勝つか、それとも魔王様が勝つかのお祭りあげての一大イベント。
ベルゼバブ:「これすき……もっと」
両手いっぱいの食べ物を小さなお口いっぱいに頬張って、今度はコレ、次はアレ、それからソレと、貪欲に指示を出すベルゼバブ様。その度に湧き上がる歓声と、徐々に増え始める驚嘆のため息。そのあまりの暴食さに、人々の笑顔が凍りつくまでそう時間はかからなかったという……。
―――そして30分後。
店主:「嬢ちゃん、負けたよ。アンタの勝ちだ!」
ものの見事に全ての夜店の全ての食材が底をつき、ベルゼバブ様圧勝のうちに伝説の大食い祭りは幕を閉じた。
ベルゼバブ:「まつり……もっと」
