アスモデウス:「いつまでたっても、まだだなんて……やっぱりかわいそうよね……。ここは、わたしが一肌脱ぐしか、ないと思うの……」
穏やかな春到来とはいうものの、まだまだ寒さ厳しい3月下旬の都内某日。
今か今かとその瞬間を待つ独特の期待感に包まれた場内には、開演を待ちわびる3333人の参加者達の荒い息遣いだけが、辺り一面に立ち込めていた。
この日招待されたのは、もちろん未だ卒業できずにいる問題児ばかり。
―――カチ……カチ……ガシャン!!
23時59分30秒、前方の巨大スクリーン上で開始までのカウントダウンを刻んでいたはずの古時計の秒針が突然グルグルと回りだし、バラバラに崩れ落ちる。
―――シャーッ!! シャーッ!! シャーッ!!
と、同時に噴水タイプの花火演出越しに映しだされたのは、悩殺バディなシルエット。
アスモデウス:「あぁんん……。やだぁ~、なにコレすっごい熱気~。んもう、ゾクゾクしちゃう……」
高性能なピンマイクのファインプレーにより場内に響き渡った魔王様の艶かしいつぶやきVOICEが、参加者達の期待感を更に刺激する。毎年恒例、お約束的なハプニング。
MC:「MAO Project PRESENTS『Cherrys Night 2013 ―卒業―』」
―――ドカーン!!
MC:「イケメン・ツケメン・ジェントルメン!! 全国1億5千万人の魔王ファンの皆様、お待たせいたしました。寒冬となった今年もまた、あの伝説のチェリーズナイトが帰って参りました!!」
参加者達:「ウォォォォォォ!!」
2年ぶりとなったMCの開会宣言と特撮さながらの爆発音を合図に、場内のボルテージは一気に高まった。
MC:「2年ぶりの沈黙を破り開催される今夜のテーマは、もちろん卒業!! それでは、今夜の主役の登場です!!」
―――プシューッ!!
ド派手にライトアップされる巨大スクリーン前のステージ。
興奮した参加者達のMAOコールの中、赤、青、黄のスポットライトが重なりあい、大量のスモークの中から登場したのは……。
アスモデウス:「みんな~、おまたせ~っ!! 今年こそ、絶対卒業しようね~っ!!」
あろうことか着衣面積の少ないバニーガール衣装に身を包んだなんとも妖艶な色欲の魔王アスモデウス様。
極小ピチピチな黒のレオタードに定番のガーターベルト。
コウモリデザインをアクセントにしたチョーカースタイルの襟と袖口で、ちょっとした品の良さを演出しつつも、キュートなウサミミとヘソ下のイカしたハートが魔王様らしいエロ可愛さを猛烈アピール。
アスモデウス:「すご~い。今年もこ~んなにいっぱい集まってるぅ。ああん……。今からドキドキしちゃうなぁ……。みんな、頑張ってねっ!! ペロッ!!」
参加者達:「ウォォォォォォォ!!」
MC:「さて、これから皆さんには、一生に一度の卒業権をかけた一発勝負に挑戦して頂きます。ライトアップ!!」
―――カシャッ!! カシャッ!! カシャッ!!
MCの言葉を合図に、一気に場内の照明が点灯した。
その瞬間、参加者達が目にしたものは、足元に製作された巨大なカジノルーレットのベットシートだった。前方の巨大スクリーンには、ルーレット映像が映し出される。
アスモデウス:「勝負は一回キリよ……。正解者全員に、わたしから特別な卒業式をプレゼントして、あ・げ・る……」
参加者達:「ウォォォォォォォ!!」
アスモデウス:「ただし~、不正解だといつもの罰ゲームが待ってるから気をつけてねッ」
参加者A:「罰ゲームか……。だが、正解すれば、アスモデウス様で卒業……。やるぞ、俺はやるー!!」
招待された3333人全員が参加の意志を表明し、ベットタイムが始まった。
アスモデウス:「じゃあ、ここで問題ね……。今日の下着の色は、何色でしょう……? んふ……。もしかしたら、ルーレットの正解と関係あるかもしれないわねぇ……」
そう言って、こぼれんばかりのたわわな果実を見えそうで見えない絶妙なラインで守る頼りなげなバストカップをわざとずらし、ペロッと舌を出す挑発ポーズで参加者達を煽っては、楽しげに笑う魔王様。
日頃押さえつけてきた欲望を刺激された参加者達は、すでに『こりゃたまらんばい!!』な絶好調状態!!
参加者A:「赤だ!! 情熱の真っ赤なTバックに違いない!!」
参加者B:「馬鹿野郎!! アスモデウス様ほど、黒いスケスケ紐パンが似合う方はいらっしゃらないんだ!!」
普段、女性には全く縁もゆかりも免疫もない参加者達。それぞれが独自の理想持論を繰り出し、あわや乱闘寸前の状態でなんとかベットタイムが終了した。
そして、運命のルーレットが回りだし……。最終的にボールが入ったポケットナンバーは……?? 00……!?
アスモデウス:「あ~ん、ふせいか~い!! ポケットインは、00。特別って意味ね。つまり~正解は、は・い・て・な・い……よ。んふふ……」
参加者達:「え……?」
アスモデウス:「罰ゲームターイム!!」
参加者達:「あっ!!」
―――パカッ。ズボッ。ジュルルルルルルル~。チーン。
アスモデウス様の号令を合図に、ベットシートの参加者達全員の欲望エネルギーが根こそぎ回収され、今年もまた卒業者は出ることがなかった。
そして……。寒冬による遅咲きが心配されていた桜前線は、集められたCherryS達の欲望エネルギー(熱量)によって、無事に開花を迎えたという。
アスモデウス:「やっぱり、Cherryって最高!!」